数年前までプロが使う本格的なカメラといえば一眼レフカメラで, ミラーレスカメラといえばAFが遅くて使いにくい, あくまでも趣味で使うカメラでした. しかし, ここ数年で特にAF性能などが向上し, プロ向けの高性能なミラーレスカメラの人気が高まっています.
Canonも昨年秋に「EOS R」というフルサイズのイメージセンサーを搭載したプロ向けのミラーレスカメラを発売しましたが, 今回レビューするのはその弟分的存在の「EOS RP」. いわばフルサイズミラーレスの普及モデルという立ち位置ですが, その性能・使い勝手はどうでしょうか?
目次
Canonの普及フルサイズミラーレス「EOS RP」
まずはその外観から.
フルサイズのイメージセンサーを搭載しているので, 当然ですが大きなマウント(レンズ取付部)が印象的です. 一眼レフと違って光学ファインダーを搭載する必要がないので, ペンタ部(Canonのマークのある場所)は低めで, 一眼レフの見た目に慣れている人からすると違和感が強いと思います.
全体的にのっぺりというか, 眠たい外観ですね. 私は高校時代使っていたフィルムカメラ, 「EOS 7」を思い出しました.
ボディの素材は特殊なプラスティックですが, マットな質感なのでEOS KissMほどの安っぽさはありません.
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続いて背面. 基本的には同社の一眼レフと同じようなボタンの配置です. ボタンの殆どを右手側に集中させているので, 撮影直後の画像確認などを片手ですばやくこなすことができます.
EOSといえば, 十字キーの位置にあるサブ電子ダイヤル(親指でグリグリする)がアイデンティティでしたが, EOS RPでは採用されませんでした. これは上位機種のEOS Rも同様です.
たかし先生
液晶ディスプレイはバリアングル液晶なので, 特にローアングルで撮影するときに便利です.
EOS RPのスペック
Canonのフルサイズミラーレスカメラ, 普及モデルのEOS RPのスペックは以下の通り. 普及モデルということもあって性能はそこそこで価格を抑えている印象です.
発売日 | 2019年3月14日 |
有効画素数 | 約2620万画素 |
常用ISO感度 | 100〜40000(ISO 102400まで拡張可能) |
映像エンジン | DIGIC 8 |
イメージセンサー | フルサイズ |
AF | デュアルピクセルCMOS AF |
連写撮影速度 | 約5コマ/s |
動画撮影 | 4K 24p, FullHD 60p |
サイズ | 約132.5 x 85.0 x 70.0 mm |
質量 | 約485g |
有効画素数は約2620万画素で, 特別高画素機というわけではありませんが, 後述の通り使いやすい画素数だと思います.
常用ISO感度も最大で40000ですから, 暗いシーンでのスナップや屋内のスポーツの撮影もキレイに・ブレずに撮影できます. しかし連写速度はエントリーモデル並で, プロの使用には厳しい部分もあります.
ボディは防塵防滴に配慮した設計とのことですが, 完全ではないため悪天候下の撮影では何かしらの配慮は必要です(これはほかのレンズ交換式カメラでも同様ですが).
上位機種「EOS R」との比較
キヤノンのフルサイズミラーレスカメラにはEOS RとEOS RPがあり, 全体的にEOS Rの方が高性能です.
主な違いは……
有効画素数
EOS Rは約3030万画素, EOS RPは約2620万画素. 数字で感じるほど大きな違いではありません. 常用ISO感度に違いはなくどちらも100〜40000の範囲.
連写撮影速度
EOS Rは8コマ/s, EOS RPは5コマ/s. スポーツの撮影などで高速な連写が必要でなければEOS RPのスピードで十分.
液晶画面, EVFの仕様
液晶画面のサイズはほとんど同じですが, 約104万ドットのEOS RPに対してEOS Rは倍の約210万ドット. 高解像度な方がピントの確認をしやすいのは確かですが, 私は104万ドットでも十分高解像度でピントの確認もしやすいと思います.
EVFもRPが約236万ドットなのに対してRは約369万ドット. 倍率もRの方が高めなので, ファインダーで正確な構図やピントを確認したい場合はRの方が有利です. RPも13万円台という価格を考えればちょうどいい性能だと思います.
また, 本体上部のサブディスプレイもEOS RPには搭載されていません. ただし, ミラーレスカメラでサブディスプレイの搭載はむしろ少数派です.
撮影モード
RPには撮影シーンや被写体を選択して撮影する「スペシャルシーン」モードがありますが, 上位機種のRにはありません. ただし全自動モードの「シーンインテリジェントオート」はどちらにも搭載されています.
バッテリー
EOS RとEOS RPでは使用するバッテリーが異なり, バッテリーの持ち(撮影可能枚数)も異なります.
EOS Rは常温で約370枚, EOS RPは常温で約250枚撮影可能となっています. EOS RPは小型軽量化のためにEOS R用のものよりもコンパクトなバッテリーを採用しており, 撮影可能枚数が少なくなっています.
- EOS RPはフルサイズのイメージセンサーを搭載したミラーレスカメラ
- 上位機種のEOS Rの方が高性能
EOS RPのいいところ
上位機種のEOS Rに対していろいろな性能・機能が削られていますが, それでも魅力的な機能がたくさんあります. Nikonに比べてCanonはここらへんの塩梅をよく心得ている気がします.
フルサイズEOS史上最小・最軽量
フルサイズのイメージセンサーを搭載していながら, 一眼レフでは実現し得なかった小型軽量なボディになっています. キヤノンでは「キヤノンのフルサイズEOS史上、最小・最軽量を達成。」と謳っています.
フルサイズのセンサーを搭載していながら小型軽量で人気のあるCanonの一眼レフ, EOS 6D Mk. IIとサイズを比較してみるとこんな感じ. 厚みはもっと違うので, やはり持ち歩くことを考えるとミラーレスのほうが助かりますね.
これまでは「フルサイズのカメラ=大きくて重い」というのが常識でしたが, EOS RPのサイズなら持ち運びも楽ですね.
ただし, EOS RPで使用するレンズ(RFシステム)は, 現状画質重視の大きく重いレンズが多い点には注意が必要かもしれません.
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低価格
フルサイズのイメージセンサー搭載のミラーレスカメラとしてはダントツで安価です.
「ミラーレスカメラに興味があるけど, 価格がちょっとな……」と思っていた人には, 十分衝動買いできてしまう価格ですね(笑).
価格はAmazonからも確認できます。
逆にこれからカメラを始めたいという人にとっても十分選択肢に入ると思います. 「最初にEOS Kissのようなファミリーモデルを買ったけど, カメラを始めてみたら思いの外ハマってしまい, もっと上位機種を買っておけばよかった」という人もいます.
ちょうどいい約2620万画素
EOS RPの画素数は約2620万画素で上位機種のEOS Rの約3030万画素に比べると控えめになっています.
画素数が多すぎると写真一枚一枚の容量も大きくなり, 画像編集に必要なパソコンのスペックもより高いものが要求されます.
2600万画素もあれば, TwitterやInstagramのようなSNSはもちろん, 大きなサイズ(全紙サイズやA3サイズ)へのプリントでも粗が目立ちませんし, 大胆なトリミングを行っても十分な画素数を確保できるので安心です.
また, 画素数を抑えたのが功を奏したのか常用ISO感度も最大40000と高め, 暗い場所でもノイズの少ない・手ブレを抑えた写真を撮影できます.
初心者向け撮影モードやガイドが豊富
少し前までフルサイズのカメラはプロやハイアマチュア向けで, 初心者はまずはAPS-Cサイズのカメラから始めるものでしたが, 最近ではフルサイズのセンサーのカメラも安くなってきていて, 最初に購入するカメラがフルサイズという人も珍しくありません.
そんな人でも思いどおりの写真を撮影したり, カメラの使い方をマスターできるようにEOS RPには初心者向けの撮影モード(かんたん撮影ゾーン)やガイド機能が豊富に用意されています. カメラの操作になれないうちでも直感的な操作で背景のボケた写真や鮮やかな写真を撮影できます.
もちろん, 慣れてきたら絞り優先AEやマニュアル露出で本格的な撮影することもできます.
- 一眼レフと比べて圧倒的に軽量コンパクト
- ライバル機種と比較して非常に低価格
- EOS Rよりも初心者向け撮影モードやガイドが豊富
次はEOS RPについて, ここが少し残念……と思った点をピックアップ.
EOS RPのここがイマイチ
当然「う〜ん」と思う点もありますが, ボディ13万円台であることを考えると目をつぶれます?
全体的に機能が制限されている
EOS Rに対して機能が制限されている部分がいくつかあります.
例えば上位機種のEOS Rにはシャッター音を消す「サイレントシャッター」機能をほぼすべての撮影モードで使用できるのですが, EOS RPで「サイレントシャッター」を使えるのはシーンモード(初心者向けの撮影モード)内のみ, つまりマニュアル露出や絞り優先AEでは使えないという制限があります.
たかし先生
無論カメラの性能的にサイレントシャッターが使えないのではなく, ソフトウェアであえて制限されていると思われます.
バッテリーの持ちはEOS Rの方がいい
EOS RPはEOS Rとは別のバッテリーを採用しており, 一度の充電で撮影できる撮影可能枚数はEOS Rよりも100枚以上少ない約250枚にとどまっています.
観光地などに旅行に出かけると一日中いろいろな写真を撮影したくなりますから, そういう意味では約250枚というのは心もとないですね. 旅行には予備バッテリーは必須だと思います.
カメラ全体の小型化のためにやむを得ないと思いますが, ライバル機のSONY α7 IIIはほぼ同じサイズ・質量でありながら倍以上の約610枚の撮影が可能です.
なお, EOS RPはUSB端子を利用してバッテリーの充電が可能なので, たとえば移動中などで撮影しないときにモバイルバッテリーなどを使って充電したり, 旅行に持っていく時はスマホ用の充電器で代用するなどの工夫ができます.
たかし先生
賛否の分かれる「バリアングル液晶」
EOS RPの背面液晶画面はバリアングル液晶という, 2軸のヒンジによって上下左右あらゆる方向に向けることのできる可動式の液晶画面が使われています.
たとえ質量とボディの厚みが増すとしても, 従来の固定式の液晶画面よりも可動式の液晶画面のほうが圧倒的に便利です. ファインダーを覗きながら撮影するのが難しいハイアングルやローアングルの撮影はもちろん, 三脚にセットして構図をしっかり確認したいときにも便利です.
しかし, 同じ可動式の液晶画面でもバリアングル液晶ではなくチルト液晶の方が使いやすいという意見もあります. チルト液晶はバリアングル液晶よりも簡単に上下に傾けることができ, 撮影時もより自然なスタイルで撮影できます.
実際, ライバル機種であるSONYのα7シリーズやNikonのZシリーズはチルト液晶を採用しています.
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4K動画の撮影には制限がある
最近の一眼レフ・ミラーレスカメラの多くは4K動画の撮影に対応しており, SONYのα7シリーズやNikonのZシリーズはプロ用の本格的な動画の撮影にも対応しています.
EOS RPも4K動画の撮影に対応していますが, 画面の中央付近をクロップするタイプなので, せっかくフルサイズ対応の広角なレンズを用意しても狭い範囲しか記録できません.
また, EOS Rや他社のフルサイズミラーレスカメラほど本格的な仕様には対応していませんが, このカメラの動画撮影機能はむしろもっと手軽に動画を撮影したいという人向けのものだと思います.
- 全体的に機能が制限されている
- バッテリーは予備が必要
- バリアングル液晶については賛否が分かれる
EOS KissMやM100とはどう違うの?
Canonのミラーレスといえば, EOS R/RPよりもKissMやM100の方が有名ですよね.
EOS RPはフルサイズのイメージセンサーを搭載している
EOS KissM, M5, M6, M100は「APS-Cサイズ」のイメージセンサーを搭載したミラーレスカメラです. それに対してEOS RPで使われているのはAPS-Cサイズよりも一回り大きい「フルサイズ」のイメージセンサーです.
一般的にイメージセンサーのサイズが大きいフルサイズのカメラの方が高画質で, 風景写真や夜景の撮影に向いていると言われています.
対してAPS-Cサイズのカメラはカメラ・レンズをコンパクトに設計できるという特徴があります.
たかし先生
使用するレンズの種類(マウント)が違う
EOS KissMやM100では「EF-Mレンズ」を使用します. 軽量コンパクトで, 価格も安め(2〜6万円台)です.
一方で, EOS RPでは「RFレンズ」を使用します. こちらは画質重視の設計で, EF-Mマウントのレンズと比較するとどれも大きくて重いものばかりです. 価格も30万円を超えるものもあって, 気軽に使えるものではありませんね.
気軽に撮影できるのはKissM(だと思う)
カメラやレンズの性能が高いのはEOS RやRPの方ですが, EOS KissMやM100の方がコンパクトで使いやすく, またレンズも気軽に揃えることができます(ミラーレスのいいところはレンズを交換していろんな写真を撮れる所です).
- EOS RPはフルサイズ, EOS KissMはAPS-Cサイズ
- EOS RPとEOS KissMでは使用するレンズが違う
- 誰でも気軽に撮影できるのはKissM(だと思う)
EOS RPで使えるレンズは?
EOS RPはミラーレスカメラなので, 撮影シーンに応じてレンズを交換することができます.
EOS RPに装着できるのはCanonのRFレンズとEFマウントのレンズです. EOS KissMなどに使われるEF-Mマウントのレンズは使用できません.
RFマウントのレンズラインナップ
RFマウントの純正レンズは現在5本ラインナップされていて, そのうち2本がズーム, 3本が単焦点レンズです.
ズームレンズは
- RF24-105mm F4 L IS USM
- RF28-70mm F2 L USM
の2本で, 24-105mmは一般的な撮影で使いやすいF4通しの標準レンズ. 28-70mmは単焦点レンズ並みの明るい標準ズームです.
単焦点レンズは
- RF35mm F1.8 MACRO IS STM
- RF50mm F1.2 L USM
- RF85mm F1.2 L USM
の3本で, 50mmと85mmはF1.2のLレンズ. 35mmは最大撮影倍率0.5倍のハーフマクロになってます.
レンズのラインナップはまだまだ少ないですが, ミラーレス化によって実現した大口径レンズの開発の容易さを裏付けるように明るいレンズが目立ちます.
どのレンズも非常に高額で, おいそれと購入できるものではありませんが, 35mm単焦点はEOS RPのキットレンズにもなっています.
マウントアダプターが充実している
従来の一眼レフカメラ用のレンズ(EFレンズ, EF-Sレンズ)をEOS RPに装着できるように, 純正のマウントアダプターが用意されています.

https://cweb.canon.jp/eos/rf/lineup/adp-ef-eosr/
望遠レンズも広角レンズも, TS-E(チルトシフトレンズ)などの特殊なレンズでも機能に制限なく使用できるのは, 早々に完全電子化を果たしたEFマウントの利点の一つでもあります.
おもしろいのは, 純正のマウントアダプターのラインナップは1種類だけではなく,
- マウントアダプター EF-EOS R
- コントロールリングマウントアダプター EF-EOS R
- ドロップインフィルター マウントアダプター EF-EOS R ドロップイン 可変式NDフィルター A付
- ドロップインフィルター マウントアダプター EF-EOS R ドロップイン 円偏光フィルター A付
の4種類があり, コントロールリング(絞り値やシャッタースピードを調整できる)付きのものと, ドロップイン式の可変NDフィルター・円偏光フィルターに対応したものも用意されています.

https://cweb.canon.jp/eos/rf/lineup/adp-dif-ef-eosr-nd/
また, フルサイズ対応のEFレンズだけでなく, APS-CサイズのEF-Sレンズにも対応しているため, APS-Cセンサー搭載一眼レフ(EOS Kissシリーズや7D, 80D系など)からの乗り換えもOKです.
EOS RPにおすすめのレンズ
EOS RPにおすすめなのはやはりキットレンズにもなっている「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」です.
フルサイズ用のレンズは画質重視のためか, たとえミラーレスカメラであっても大きく重いものばかりですが, そんな中でも35mm F1.8はコンパクトになっています.
たかし先生
35mm F1.8というスペックは大したものではありませんが, オートフォーカス用に高速で静音なSTM(ステッピングモーター)を内蔵しており, スナップ撮影にピッタリです. また, 撮影倍率0.5倍のマクロ撮影にも対応しているので, 料理やネイチャーフォトにも利用できます.
また, まだ発売はされていませんが「RF24-240mm F4-6.3 IS USM」という高倍率ズームレンズもラインナップに加わっており, 動画撮影時や運動会や旅行など, レンズ交換の手間を省いて様々な写真を撮影したいときに便利なレンズです.

https://cweb.canon.jp/eos/special/eos-r/rflens-announcement/
まとめ
2018年は各社からフルサイズのイメージセンサーを搭載したミラーレスカメラが相次いで発売され, 「フルサイズミラーレス元年」などと呼ばれていますが, 皆さんの中にフルサイズのミラーレスカメラを検討している人はどれくらいいるでしょうか?
私の周囲にも何人かSONYのα7シリーズを使っている方が何人かいますが, ミラーレスのカメラはファインダーで露出や色味を確認できるのが便利ですよね. 最近はAFも高速で正確ですし.
もしも「そろそろフルサイズのミラーレスカメラを使ってみたいな」と検討している方がいたら, EOS RPはその有力な選択肢の1つになると思います.